再生可能エネルギーによる100%電力供給への挑戦 再生可能エネルギーによる100%電力供給への挑戦

あれから9年

沖縄本島の南西約460kmに位置し、「果てのうるま(サンゴ礁)」という意味からその名がついたと言われる日本最南端の有人島、波照間島。
その波照間島に当社が日本初の可倒式風車を導入してから9年(OKIDEN PROJECT 1参照)。今度は島全体の電力供給を再生可能エネルギー由来の電力だけで行うプロジェクトが実行されようとしていた。

CHAPTER01

離島における電気事業の難しさ

沖縄県は東西1,000km、南北400kmにも及ぶ広大な海域に点在する大小約160の島々で構成される島嶼県であり、当社は沖縄本島を含む37の有人離島へ電気を供給している。
人の暮らす全ての島へ、24時間365日絶えることなく同じ品質、同じ料金で電気を送り届けること。ユニバーサルサービスは沖縄電力の最も重要な使命である。
海底ケーブル等で沖縄本島と繋がっていない離島においては、需要規模が小さいことなどからディーゼル発電機等の内燃力発電を主体とする電源構成となっている。内燃力発電は化石燃料のなかでも価格の高い重油を燃料とするうえ、なかにはタンクローリーやドラム缶で輸送する離島もあり、どうしても高コストとなってしまう。これまでも海底ケーブル化や燃料油変更など効率化を進めてきたが、離島における電気事業の収支不均衡は当社の長年の経営課題となっている

CHAPTER02

再生可能エネルギーにかける想い

太陽光発電や風力発電などは、発電するために化石燃料を使用しないため、発電時に地球温暖化の原因とされている二酸化炭素(CO2)を排出せず、環境問題への対応に役立つクリーンなエネルギーとして社会的な期待および必要性が高まっている。
当社は、地球温暖化対策を優先し対応すべき重要な経営課題の一つに掲げており、離島においても宮古島メガソーラー実証研究設備をはじめ、可倒式風車の導入など再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入拡大に積極的に取り組んできた。
「化石燃料を使用せず、再エネで100%電力供給を賄うことはできないか。」そう考えても不思議ではないが、再エネは天候や風況により発電出力が大きく変動するため、安定的に電力を供給するためには様々な課題がある。電力供給はお客さまが使用する電気の量(需要)と電力会社等が発電する電気の量(供給)を常に一致させる必要があり、もしそのバランスが崩れてしまうと大停電に繋がってしまう。再エネの発電出力に大きな変動があったとしても、それに合わせて需要が変動するわけではないため、通常はディーゼル発電機を併用し、再エネの発電出力変動に合わせて、ディーゼル発電機の発電出力を増減させることで需要と供給のバランスを保って安定供給を行っている。しかし、ディーゼル発電機は内燃力機関の特性上、定格出力の50%未満に抑えて発電することができず、常に運用下限である定格出力の50%以上の出力で運用し、下げ代を確保する必要がある。したがって、「ディーゼル発電機の運用下限+再エネ出カ>系統需要」となる場合、ディーゼル発電機の下げ代を確保するために再エネの出力を制限しなければならないのだ。この事象は「ディーゼル発電機の下げ代不足」と呼ばれ、再エネ導入拡大の制約となっていた。

CHAPTER03

MGセット構想という光

「もったいない。再エネはもっと有効活用できる。ディーゼル発電機に代わる、より運用下限の低い新たな安定電源はないか。」
ディーゼル発電機の下げ代不足を解決する為に、複数の電機メーカーとディスカッションを交わすなかでいくつか候補は上がるもののなかなか解決策には至らなかった。担当者が頭を悩ませていたそんなある日、ある電機メーカーから「MGセット構想」の話が上がった。再エネで発電した電気でモーター(Motor)を回し、そのモーターで発電機(Generator)を回す発想だった。MGセット自体は既存の技術であり、主に周波数変換装置等では使用されているが、再エネ導入拡大を目的に設置された事例はなかった。
早速、担当者は調査に執りかかった。
「なるほど。確かにMGセットは、ディーゼル発電機と同等の機能(周波数維持機能、電圧維持機能等)を有するうえ、駆動源がモーターであることから発電機の運用下限が無い。これだっ!」
調べれば調べるほど理論上は設置可能であった。
「既存の技術でイノベーションを起こせるかもしれない。」
担当者に希望の光が差し込んできた。
時を同じくして沖縄県においても石油依存度の低減、エネルギーの多様化およびエネルギー自給率向上等を図るため、2010年度に「沖縄県エネルギービジョン」を策定し、小規模離島における再エネ最大化構想を模索し、実証事業を公募していた。それは再エネ利用拡大を目指す当社の想いと一致するものであった。技術的な検討を進めながら、沖縄県と定期的な意見交換を行い、当実証事業への応募に向けた検討も並行して行った。

「MGセットを組み合わせることで、再エネ導入拡大に拍車をかけることが可能な島はどこか。」
複数候補が挙がる中、需要規模と再エネ設備の導入状況から、波照間島が最大効果を得られると判断した。
そして、2016年。一括交付金を活用した沖縄県の「スマートエネルギーアイランド基盤構築事業(小規模離島における再生可能エネルギー最大導入事業)」を受託し、世界に類を見ない取り組みがスタートした。

CHAPTER04

再エネ100%電力供給への挑戦

波照間島は、需要規模300kW~800kWの独立系統である。2009年度に国内初となる可倒式風車を導入した(245kW×2基)。それは、離島における再エネ導入の可能性を大きく広げる画期的な取り組みであった。その後、可倒式風車の出力変動が電力品質(周波数、電圧等)に及ぼす影響を緩和するため、系統安定化装置(鉛蓄電池+パワーコンディショナー)を導入し、より安定的な運転が可能となったが、ディーゼル発電機の下げ代不足により、依然として可倒式風車の出力制限を解消するまでには至らなかった。更なる再エネ導入拡大への突破口を探している中で、MGセット構想と実証事業の話が重なったことで、再エネ100%電力供給への道が開かれる期待感で現場の士気は大いに上がった。
波照間島に設置したMGセットは主に同期発電機、誘導電動機、双方向インバーターで構成され、系統安定化装置の鉛蓄電池を駆動電源とした。これは、当初構想を基に設置工事期間の短縮や既存設備を利活用したコスト低減を図ることも意識した構成としている。

MGセットは、需要に対する再エネ発電出力の割合が増加し、ディーゼル発電機の下げ代確保が困難となる場合、ディーゼル発電機からMGセットに運用を切り替える。また、MGセットは系統安定化装置の鉛蓄電池に充電を行いながら運用できるため、「可倒式風車の出力>系統需要」の状態が続く限り、再エネ100%電力供給は継続される。再エネ100%電力供給時には、可倒式風車、系統安定化装置、MGセットが人による操作や自動運転により有機的に機能し、補完しあって運用を行うことになる。駆動源をディーゼル機関ではなくモーターとするMGセットを活用することで、これまでと同様に安定的な需給運用を維持しつつ、再エネ導入拡大に寄与することが期待できる設備として、詳細仕様検討、機器製作、現場設置と作業は順調に進んだ。

CHAPTER05

立ちふさがる壁

2017年度にMGセットの設置工事が完了し、竣工検査において数分ではあるが再エネ100%電力供給を達成し、翌2018年度からMGセット実証運用を開始した。
段階的にあらゆる実証運用の確認を経て、いよいよ2018年10月30日に本格的な再エネ100%電力供給に臨んだ。
しかし、ここでいきなり大きな壁が立ちふさがった。再エネ100%電力供給の開始から30秒後、電力系統にこれまでにない変動が起こり、このままでは安定供給が難しいと判断し、試験は即中止となった。
「何が起こったのか。なぜこうなったのか。」
構想段階から現場に対して「安定供給は大前提」と繰り返し説明してきたにも関わらず、積上げた信頼は崩れかけ、MGセットを含め運用していた全ての機器に対する不信感が芽生えてきた。いったん竣工した機器の不備も否定せず、既存の鉛蓄電池及びパワーコンディショナーの不具合、可倒式風車の不具合や異常突風等あらゆる側面から原因究明する必要があった。
「そもそも再エネ100%電力供給は達成し得ない技術なのか?このままMGセットが運用されなければ、県の実証事業はどうなるのか?」
負の思いに押しつぶされそうになりながら原因究明が始まった。竣工検査の試験時において短時間ではあるものの再エネ100%電力供給が達成できていたことから、前回と何が異なっていたのか、担当者は推定原因の絞り込みを行った。すると、一見複雑に見える電力系統の状態も細かく分析すると、複数の要因に分解できた。MGセットと系統安定化装置にて使用した制御機能やパラメータを一つ一つ確認した上で、可倒式風車のメカニズムを考慮すると、試験時の状態を論理的に説明することが可能となった。機器一つ一つの変動が様々な変動を誘起し、電力系統の大きな変動へと発展したのであった。解決するためには要因それぞれに対策を行う必要があるが、再発防止策は本当にこれで問題がないのか、MGセットの担当者は根気強く検討し、再試験に備えた。また、再エネ100%電力供給は、需要が低く、風況が良い限られた断面でしか実施できないため、2018年度中に再試験ができる期間はわずかしか残っていなかった。しかも、もう失敗は許されない。担当者には焦りと相当のプレッシャーがあったが決して諦めなかった。島内の需要状況、気象状況を冷静に分析し、ついに2018年11月27日に再試験を設定した。


CHAPTER06

再挑戦

再試験当日、試験環境が揃うタイミングは夜中から朝方にかけての時間だけだった。担当者は、発電所に夜中から待機し、風況が良くなる頃合いを逃すまいと固唾を呑んで見守っていた。風が弱く、可倒式風車の出力がなかなか上がらない時間が続いた。
朝方、急に風が吹き始め、再エネ100%電力供給ができる環境が整った。各担当者が試験体制につき再試験がスタートした。まず、MGセットを電力系統に繋いだ。MGセットが問題なく動作していることを確認し、2台運転しているディーゼル発電機のうちの1台を電力系統から切離した。 可倒式風車は更に出カを上げ、もう1台のディーゼル発電機を切り離した。可倒式風車の出力制限が完全に解除され、可倒式風車+系統安定化装置+MGセットによる再エネ100%電力供給が始まった。 ディーゼル発電機のエンジン音が消え、発電所が静寂につつまれる中、メンバーは1秒、1秒、気を緩めることなく各機器や系統の状態を注視し、異常がないか確認作業を繰り返し行った。 可倒式風車は風を受け発電し、系統安定化装置が可倒式風車の変動を吸収し、MGセットが需要とのバランスを整え、再エネ100%電力供給は行われた。風が弱くなり試験が終了するまでの間、前回のような異常な状態は発生しなかった。 それは、担当者が苦労して練り上げた再発防止策の有効性が確認できた瞬間であり、同時に1時間47分もの間、再エネ100%電力供給を達成した瞬間でもあった。

CHAPTER07

更なる高みへ

それからも実証は続き、MGセット運用において想定される不安定な状態に対し、これまでの実証データを基に運用範囲を検証した。波照間島の発電所員とも議論を重ね、より良いMGセットの運用方法を検討し、MGセットの運用実績と自信を積み重ねた。
そして2020年11月、可倒式風車が最大限発電できる強い風が1週間以上吹く予報を確認した担当者は、試験メンバーを揃え、すぐ波照間島へ向かった。海上は風の影響を受け少しずつ荒れ始め、島へ向かう船内はいつもより揺れていた。「これはいい風が吹くかもしれない。」試験メンバーは、長時間の再エネ100%電カ供給への期待に湧いていた。
結果、2020年11月27日18時21分から試験を開始し、12月7日7時48分までの約10日間、継続して再エネ100%電力供給を達成し、これまでの記録を大幅に更新した。この10日間も変動する風況や需要により、様々な状況が発生したが、これまでの実証データやMGセットの運用方法への知識・経験が発揮され、達成した成果だった。2年前、1分も持たず実証試験を中止せざるを得なかった時の絶望感を思い出し、この10日間は時間の概念がどこかに行ってしまったような果てしない時間に思えた。

沖縄への想い

2020年12月、当社は2050年CO2排出ネットゼロの実現に向け、ゼロエミッションへの取り組みを宣言した。当社がこれまでに培った技術を活かすとともに、新たな技術導入により、持続可能なエネルギーシステムを構築し、安定供給と地球温暖化対策の両立に取り組み、社会へ貢献するために。
沖縄電力の挑戦は続く。

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