総合エネルギーサービス ESPの推進 総合エネルギーサービス ESPの推進

CHAPTER01

進化への胎動

「できない理由を探すな、前に進むためにはどうすればいいかを考えよう。諦めるのは簡単だ。諦めることはいつだって、誰だってできる。俺たちが諦めたら、誰が沖縄で総合エネルギーサービスを展開するんだ!」
社内関係者が集まり、お客さまへの提案上の課題や方策について議論を交わす会議の場で、総合エネルギーサービスを最前線で提案する担当者は、声を荒らげた。
沖縄電力はガス供給事業の準備を進めながら、並行して総合エネルギーサービスへの取り組みも進めていた(OKIDEN PROJECT 1参照)。難題が立ちはだかろうと決して臆さない。臆してはいけない。すべては、お客さまのため。そして、沖縄電力を電力会社から「総合エネルギーサービス事業者」へと進化させるため。これまで誰も味わったことのない使命感が、彼らを突き動かしていた。

CHAPTER02

環境の変化、どう適応するか ~はじめの一歩、仲間と共に~

2016年4月の電力小売全面自由化、翌29年4月のガス小売全面自由化により、お客さまが当たり前のように決められたエネルギー会社からエネルギーを購入する時代は終わった。本格的な競争時代へ突入したのである。 首都圏を皮切りに、かつての電力会社・ガス会社を中心としたエネルギーの自由競争が始まった。加えて、規制が完全に撤廃されたことにより、これまで電気やガスとは関わりのなかった業態や企業も垣根を超え「新電力」としてマーケットに参入してきた。まさに、「エネルギー戦国時代」の幕開けである。
ここ沖縄県は、地域開発に加え、リゾートホテルの建設、基地返還跡地の再開発等が計画されており、本土に比べ、エネルギー販売拡大のポテンシャルはまだまだ大きく、規模は小さいながらも魅力的なマーケットだと言える。自由化の名のもと、県外大手エネルギー会社という黒船は来航しており、競合他社が水面下で、しかし確実に動きを見せていた。
このままではいけない。沖縄電力の社員誰もが危機感を抱いていた。電気や天然ガスの安定供給は当然のこと、これからは、エネルギーという「商品」に付加価値をつけ、徹底した差別化を図ることが求められている。いや、差別化だけでは物足りないかもしれない。県外エネルギー会社と競争するためには、沖電グループの新たな、そして コアとなる「武器」が必要とされていた。
経営環境の変化に対応するための自己変革、その先の進化を見据え、生み出された新たなサービスが「総合エネルギーサービス」であった。

CHAPTER03

サービスを通して、新たな価値を

総合エネルギーサービス」とは、大規模工場や、病院、ホテル、商業施設等のエネルギー利用の多いお客さまを対象としたサービスである。「電気」に加え、沖縄電力の新たな商品として加わった「天然ガス」を組み合わせ、お客さまにとってメリットがあるエネルギーシステムを提案し、お客さまのニーズに合った最適なエネルギー利用環境をワンストップ※1で提供する。総合エネルギーサービスを推進するため、社内から精鋭を集めた「総合エネルギーサービスチーム」が結成された。総合エネルギーサービスの第一歩として、お客さまのエネルギー使用状況を把握するため、「エネルギー診断」を実施し、その診断結果を用いてボイラ等の熱源設備をベストミックス※2で組み合わせ、現状よりも省コスト、省エネとなるようなエネルギーシステムを提案する。どのような熱源の組み合わせが最も省コストで省エネとなるのか、お客さまのニーズに応えられるのか、担当自らがシミュレーションするとともに、試行錯誤を繰り返す。また、可能な限りお客さまの初期投資を抑えるため、必要に応じて補助金の活用を含めたファイナンスサポートも実施する。電気だけを販売していた時代には、思いもつかなかったようなサポートでも、「お客さまのためになるなら」と、次々に新しい扉を開けていった。
これらに加えて、設備運開後のアフターサポートまで含めて、担当がワンストップで提案していく。つまり、沖電グループのエネルギーをご利用頂くお客さまのために、沖電グループが提供できるサービスは何でも提供する、それこそが「総合エネルギーサービス」の本質なのである。
沖電グループで総合エネルギーサービスを開始して約4年が経過した。少しずつお客さまの数も増えてきたが、交渉先はお客さまだけにとどまらず、行政や設計業者、機器メーカー、施工業者、リース会社、グループ会社、社内関係部署と多岐に亘る。各担当がそれぞれのプロジェクトの責任者となり、全体最適化に向け全国を飛び回る。各担当は前例がない中、プロジェクトの答えを求めて奮闘し、限られた時間の中で、ベストな提案を日々お客さまに出し続けた。提案の正解は1つではない。メンバー間で議論を交わすため、真っ白なホワイトボードは毎日隙間なく書き込まれ、気付けば真黒に変色していった。「お客さまのため、総合エネルギーサービスを通じて、新たな価値を生み出す」その想いがあるからこそ、どんなに困難で高い壁も協力し乗り越えていった。

CHAPTER04

サービスをさらに、シンカさせよ

かつて鎌倉時代に活躍した滋賀県の近江商人が大切にしていた考え方として、「三方良し」の精神がある。三方とは、「買い手」「売り手」「世間」を指し、つまり「買い手と売り手がともに満足し、さらに社会貢献もできるのが良い商売である」というものだ。
「お客さまにより満足して頂くために、私たちが出来ることを追求しよう」
総合エネルギーサービスチームのメンバーは、サービスをさらに深化させるため、お客さまのニーズを徹底して洗い出し、改めて2つの課題に着目した。
第一に「設備にかかる初期投資の負担」。最適なエネルギーシステムの構築にはその初期投資の負担が大きく、補助金を活用できたとしても熱源の設備投資に係る費用は少なくはない。そこがネックとなり設備更新に踏み切れないケースがあった。
第二に「設備の運用管理」。いくらエネルギー効率の良いシステム(ハード面)が構築できても、しっかりとした運用管理(ソフト面)が伴わなければ宝の持ち腐れとなってしまう。設備利用環境の変化もあり、当初設計側の意図した設備の運用方法と異なる運用をしている現場が多く見受けられた。
「これまで電気事業で培った設備の効率的運用や緊急時対応等のノウハウは私たちの強みだ。今後はその強みを発揮しながら、これまでの総合エネルギーサービスに加え、お客さまの課題解決に繋がる新たなサービスを展開できないか」
総合エネルギーサービスチームに新たな難題が降りかかった瞬間であった。設備投資や設備運用は、これまではお客さま側の問題であり、エネルギー会社が解決すべき問題ではなかった。しかし、今は違う。エネルギーに関する高付加価値のサービス提供だけではなく、エネルギーに関する問題を解決することも求められるのだ。
お客さまのニーズや実態を踏まえ、「総合エネルギーサービス」を更に深化させるべく、「エネルギー・サービス・プロバイダ(以下、ESP)」という、沖電グループにとって新たなサービスの検討が始まった。

CHAPTER05

新たなサービスの誕生 エネルギー・サービス・プロバイダ(ESP)

ESPとは、お客さまに代わって電気・熱源設備等を所有し、お客さまが利用する空調用冷温水や給湯用温水、製品の製造工程で必要な蒸気等を電気やガスから加工して提供するサービスである。
省エネ診断、最適なエネルギーシステムの提案、計画・設計、設備保有、エネルギー調達、メンテナンス、運転管理、24時間365日の遠隔監視による緊急時対応など、エネルギーに関する業務をESP事業者が行う。
お客さまは初期投資ゼロで設備の新設、更新が可能となるだけでなく、設備の定期点検費用から突発的な補修対応費用までエネルギーサービス料金に含まれているため、費用の平準化が可能となる。また、エネルギーのプロ集団が設備の運用管理を行うため、これまでお客さまが設備管理にかけていた経営資源(ヒト・モノ・カネ)を本業に集中させることができる。さらに、ESP事業者がその設備の運用状況を常にチェックし、運用改善(PDCA)を積み重ねることにより、更なる省エネを図る仕組みだ。
総合エネルギーサービスのセカンドステージが幕を開けた。しかし、新たなサービスの展開は、困難の連続であった。これまで誰も経験したことのない、新しい仕組みにどう取り組んでいくか。新たなサービスを形にしていく。そこにはまさに産みの苦しみがあった。
お客さまとの交渉のステージでは、さまざまな要求に的確に応えていかなければならない。お客さまからの信頼を得るには長い時間が必要だが、その信頼を失うのは一瞬である。その緊張感は現場の最前線で提案活動を行うプロとして、誰もが強く認識していた。お客さまが期待してくれているからこそ、その期待を超える結果を出したかった。「まずは1件獲得しよう。結果を出そう。そうすれば我々の活動も必ず理解してもらえるはずだ」
お客さまへの提案をさらに強固なものとするため、電力系・ガス系の事業者含め外部からの知見も積極的に活用した。特にガス系の事業者に関してはこれまで沖縄電力の取り組みとして弱かった「熱需要分野」を開拓する上で大きなチカラとなっている。外部からの知見を活用する中でも、本土でも多くの実績があり、また、数ある事業者の中でもトップクラスの知見と技術力を有する東京都市サービス(株)とアライアンス(協定)を組むことが決定した。彼らは沖縄というマーケットに魅力を感じ、沖縄で本格的にESPを展開したいと考えていた。また、沖縄電力としても、お客さまにエネルギーを安定的にお届けするという責任感から、ESPのノウハウを貪欲に吸収し、沖縄にそのノウハウを根付かせたいと考えていた。両者の想いは一致していた。

パートナーとなった東京都市サービスが持つ技術力とその経験に基づく対応からは、学ぶべきものがあった。現場において、お客さまから投げかけられる高度かつ専門的な質問に対しても、エネルギーシステム図をその場で書き上げ、具体的かつ丁寧に説明する。彼らの技術と経験に裏打ちされた迅速な対応がお客さまからの信頼を得るのに時間はかからなかった。また、お客さまだけでなく、我々チームも良い刺激を受けたが、同時に悔しさもあった。現状に満足してはいけない、我々も早く経験を積み、更に技術を高めなければならないという気持ちが込み上げてきた。メンバーは共同提案を行う中で、その技術力を彼らの傍らで学びながら、お客さまへの提案活動を地道に進めていった。
提案にあたり、お客さまからさまざまな依頼・要望が投げかけられた。メールや電話でのやりとりだけでなく、直接お客さまのもとに出向き、その真意に迫ることを心掛けた。多いときには一日に3度も足を運んだこともある。しかし、誰ひとりその手間を惜しまなかった。それがお客さまの要望に的確に応えること、ひいては「何か困ったことがあればすぐに駆けつけ応えてくれる、頼もしいパートナー」という「信頼」を得ることに繋がると確信していたからだ。
その結果、両社の取り組みが評価され、浦添西海岸に新設予定の大型ショッピング施設や、県内最大級の災害拠点病院にエネルギーサービスの採用が決定した。

CHAPTER06

羽ばたくための翼(株)リライアンスエナジー沖縄設立

沖縄電力と東京都市サービスによるESP提案は、お客さまのニーズや課題を洗い出して取り組んだこともあり、お客さまから高評価を得て、いつしか、沖縄電力の経営方針の中にも「総合エネルギーサービスの積極的な展開」の文字が並んでいた。ESP提案への反応が良いこともあり、沖縄電力と東京都市サービスは「協定」という枠を超え、より高いレベルでESPに取り組む決意を固めた。常に先を見据えるESP担当者に迷いはなかった。
2017年12月、沖縄電力と東京都市サービスによる合弁で、ESPを専門に展開する新会社が誕生した。その名は、「株式会社リライアンスエナジー沖縄」。“リライアンス”という言葉は、“信頼”という意味である。“信頼されるエネルギー事業者を目指す”という決意を込めた。沖縄電力が子会社を設立するのは十数年ぶりのことであり、経営環境の変化、お客さまのニーズへの対応を形にするため、沖電グループが全力で取り組むという姿勢の集大成である。リライアンスエナジー沖縄の船出は順風満帆となった。先にESP導入を決定したお客さまのみならず、その他の産業・商業施設ともESPに関する交渉が積極的に進められている。ESPが生み出す価値を誠意を持って伝え、またその想いがお客さまに伝わった時、ESP担当者とお客さまの間で、固い握手が交わされる。我々が目指していたESPのあるべき姿は、間違っていなかった......そう確信した瞬間である。

CHAPTER07

沖縄の明日を、そして未来をつくる

総合エネルギーサービスを立ち上げた際、メンバーの顔合わせも兼ねた会合でこういう話題となった。 「お父さんは、会社でどんな仕事をしているの?」
幼い我が子に尋ねられた時、どう答えるべきか。いや、親として、どう答えることができる自分でありたいか。
細かい業務の内容を説明しても理解はしてもらえないが、少なくとも今手がけている仕事が自分の子供に誇れるような、周りの友達にも胸を張って自慢できるようなものであってほしい。
エネルギー事業者は表舞台には立たない黒子のようなものだ。エネルギーはお客さま、地域、そして沖縄の経済活動を支える「縁の下のチカラ持ち」なのである。 総合エネルギーサービスは周囲からの期待も高く、その分プレッシャーも大きいが、私たちは今、一生に一度できるかできないかのプロジェクトに関わっている。そして何よりも苦楽を共にしている仲間とチームが大きな支えとなる。
私たち総合エネルギーサービスを担うメンバーは、自分の子供たちに胸を張ってこう言えるような仕事をしようと約束している。「お父さんは、沖縄の明日を、そして未来を作っている」
大袈裟かもしれないが、その決意とあくなき挑戦は、今も続いている。

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