OKIDEN PROJECT - 沖電プロジェクト - 02 LNGを調達せよ

プロローグ

プロローグ

平成27年4月、沖縄本島北中城村のアワセ米軍用地返還跡地に県内最大の大型ショッピングモールが誕生した。基地返還跡地開発のモデルケースとして注目を集め、開業当日多くの人で賑わいを見せた。人であふれかえるフロア、優雅な内装、水槽の熱帯魚、あちこちで笑顔が咲き乱れた。この日、沖縄で最も輝いているこのショッピングモールの開業を人知れずエネルギー供給で支えた、技術者集団がいた。

CHAPTER01

LNGを調達せよ。

今から遡ること約20年前、安定的な経済成長を続ける沖縄県の電力需要を補うべく、沖縄電力では、これまで扱ったことのない燃料であるLNGを燃料とした発電所の建設が決定した。
「新発電所の燃料となるLNGを調達せよ」このシンプルかつ壮大なミッションがすぐに当時の燃料室メンバーに課された。

しかし、当時の彼らは当然LNGのことなど何も知らない。期待と不安と高揚感が交錯する複雑な気持ちの中、ゼロからすべて手探りでLNGを調達するという、長い長いチャレンジが始まった。

CHAPTER02

沖電にLNG火力発電所は無理だ

沖縄電力がLNG火力発電所の建設を決定したとき、業界内ではその実現について疑問視する声も少なくなかった。中には、「沖縄電力がLNG火力発電所を建設するのは無理」と嘲笑する者もいた。確かに、多くの離島を抱え、発電用燃料を石油と石炭のみに頼ってきた地方の小さな電力会社にとって、海外から大型の専用船で直接調達することが一般的なLNGは、途方もなくハードルの高い挑戦なのは事実であった。

そのハードルとは、つまり石油や石炭と比べ契約の内容が大きく異なることであり、それはLNG特有の商慣行からくるものであった。その背景には、莫大なコストを要するLNGプロジェクト(※2)の開発は、買い主の購入が決定して初めてガスの掘削・生産が開始されるという、LNG開発固有の事情がある。以下の点が主に石油・石炭とは異なる点である。

【契約期間の長さ】石油・石炭は年間契約または短期・スポット調達が一般的だが、LNGは契約期間が10~25年の超長期に亘ることが一般的である。 【交渉先の違い】石油・石炭は買い主・売り主などのプレイヤーの数が多く、マーケットが形成されているため商社などを介して調達するのが一般的だが、LNGはプレイヤーの数が限られており、マーケットも限定的であることから、日本の電力会社・ガス会社は直接、海外の売り主と交渉して調達することも少なくない。当然、交渉や契約書はすべて英語である。
【契約の複雑さ】売り主はガスの生産を買い主の購入意思により決定しているため、原則として買い主の長期的な購入量は固定的で柔軟性は少ない。また、不要な転売を避けるためLNG船は予め決められたLNG基地にしか仕向けられないという縛りがあることも多いという点でも他の燃料の契約とは大きく異なる。加えて、1回の購入だけで数十億円の金額が動く取引となるため、契約書は細部に至るまで詳細に定められる。

燃料室のメンバーは、LNGを調達するというゴールまでに幾つのハードルが待ち構えているのかも分からない状態であった。いや、そのハードル一つ一つの高さすら見えていなかった。しかし、彼らは「お客さまに安定的かつ経済的に電力を届ける」という電力マンとしての情熱を持って突き進んでいた。

CHAPTER03

募る不安

百聞は一見にしかず。とりあえず、燃料室のメンバーはLNG船の視察に向かった。石油タンカーや石炭船は見慣れていたが、LNG船の大きさには圧倒された。全長約300m、全幅約50mで、球形のモス型タンクと呼ばれるタンクを複数搭載したその船は、サイズだけでいえば、戦時中の戦艦「大和」や「武蔵」をしのぐ大きさである。「こんなデカイ船を本当にうちが扱えるのだろうか…」そんな想いが駆け巡った。LNG船はその大きさだけではなく、-162℃のLNGを運ぶため最新鋭の技術が詰まっているため運用が難しい。もちろん、船の建造コストも高い。沖縄電力が専用船として使用している「津梁丸」サイズの大型石炭船の一般的な建造コストが30~50億円なのに対して、一般的なLNG船のコストは200億円を上回ることもある。現に、日本で引退したLNG船は海外で洋上LNGプラントとして再利用されることもあり、いわば人類の英知の結晶なのである。知れば知るほど、不安と課題が募るLNG調達に燃料室のメンバーは想い悩んでいた。目の前にそびえるLNG船の巨体が、彼らの行く手を阻む大きな壁にさえ見えた。

接岸
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