OKIDEN PROJECT - 沖電プロジェクト - 01 総合エネルギーからの街づくり

平成27年4月、沖縄本島北中城村のアワセ米軍用地返還跡地に県内最大の大型ショッピングモールが誕生した。基地返還跡地開発のモデルケースとして注目を集め、開業当日多くの人で賑わいを見せた。人であふれかえるフロア、優雅な内装、水槽の熱帯魚、あちこちで笑顔が咲き乱れた。この日、沖縄で最も輝いているこのショッピングモールの開業を人知れずエネルギー供給で支えた、技術者集団がいた。

CHAPTER01

地域の声に導かれ

平成24年11月、県内初となる天然ガスを燃料とする吉の浦火力発電所が運転を開始した。主に石炭・石油を発電用燃料として利用していた沖縄電力にとって、天然ガスを導入するのには大きな目的があった。「長期的な供給力の確保」、「エネルギーセキュリティの向上」、「地球温暖化対策」。そして、水面下で動き出した「ガス供給事業」である。
天然ガスは本土では40年以上前から普及している代表的なエネルギー源であるが、沖縄ではこれまで外国からの輸入基地がなく、他の化石燃料に依存せざるを得なかった。一方で、二酸化炭素排出量が石油系燃料と比較し30%少ないその環境性ゆえ、低炭素化社会実現に向けた重要なエネルギー源とされており、都市ガスや産業用燃料としてのニーズもある。
事実、吉の浦火力発電所の建設が動き始めた時、長年待ち望んでいた県内での天然ガス利用の可能性を期待して、多くのお客さまから天然ガス供給の要望があった。新たなエネルギーの可能性、地域の声に導かれ、沖縄電力の「ガス供給事業プロジェクト」はスタートした。

CHAPTER02

新規事業として
~はじめの一歩、仲間と共に~

プロジェクトの開始は平成18年に遡る。地域の声を受け、新規事業開発を担当する事業開発部が、ガス供給事業の実現に向け動き出した。天然ガスを電気事業で扱うことですら初めての中、計画段階から幾多もの困難が続いたが、県内で唯一天然ガスを扱える事業者として、「沖縄電力にしかできない、沖縄電力がやるしかない。」そんな想いを胸に、数名のメンバーでプロジェクトは動き出した。

彼らが最初に取り組んだのは、ガスを知るということ。電気についての知見はあるが、ガスは未知の領域である。電気とは根本的に全てが違う。設備面、関連法令、必要な資格も違えば、営業の仕方さえ異なる。共通しているのは、エネルギー源であるということだけ。まさにゼロからのスタートだった。
徹底的に県内のエネルギー市場を分析し、100社近くのお客さまへヒアリングを重ねた。その中で、沖縄県において、天然ガス供給がいかに有意義であり、市場経済の活性化にもつながる無限のポテンシャルを持ったエネルギーであるかということを、確信するようになる。「天然ガスは必要とされている!」プロジェクトチームの中に、未来へのビジョンが見え始めた。
ビジョンの実現には、人財、資金、ノウハウ等、必要なものがたくさんあった。そして何よりも重要なことは、社内関係部署の協力であったが、難航を極めた。沖縄電力の基本的使命は電力の安定供給である。「電気とガスの安定供給が両立できるのか。」安定供給がDNAとして根差した技術部門からは、厳しい意見も飛び出した。

「ガス供給事業は、全社一丸となって取り組まねば成立しない。そのためには、全社員が納得するような事業スキームを構築し、協力体制を整える必要がある。」県内外のガス事業者、関係省庁、メーカーなどから情報を収集し、意見を求め、幾度となく事業スキームを練り直した。そして、社内の関連部署と数え切れないほど多くの協議を重ねた。
プロジェクトチームでは率先して最難関の国家資格も取得した。そんな彼らの想いは、社内に少しずつ浸透し始めた。「新しい未来を切り開く事業だ。」「沖縄電力にしかできないなら、やろうじゃないか。」そう言ってくれる社員が現れ始めた時、様々なプロセスが一気に回り始めた。本気になった技術部隊は頼もしい味方となった。「安定供給のためには、中途半端は許されない。やるなら、徹底的にやるべきだ。」
プロジェクトチームの増員、設備建設チームの新設という協力体制が構築され、「本気でやれば熱意は通じる。諦めなくてよかった。」メンバーがそう感じた時、事業検討開始から2年が経とうとしていた。

吉の浦

CHAPTER03

壁、また壁の連続

次に彼らが行ったのは、お客さまへの営業活動であった。エネルギーを必要としているお客さまのニーズを把握し、天然ガス供給のフィールドを広げられるかもしれないと見込んだものの、当初は電力会社というだけで懐疑的な目を向けられた。「なぜ、電力会社がガスのことを調べているのか。」そんな雰囲気の中、丁寧に、少しずつ、ゆっくりと対話した。沖縄県や地域にとってプラスとなる事業を始めることを理解してもらう努力を重ねた。
熱需要があると考えられるお客さまのもとへ足しげく通い、分かった。「ガスを供給する」という視点では、中々話を聞いてもらえない。「お客さまのエネルギー問題を一緒に解決するパートナーにならなくてはならない。」お客さまが抱えるエネルギーに関する悩み・課題に対して、沖縄電力の電気・ガス・提案力・・・解決策として提供できるものは全て提供する。お客さまに寄り添うパートナーになる、そんな姿勢・誠意が伝わらなければ、相手にされるはずがない。われわれ自身が、変わらなければならない。
昼夜を問わず、何足も靴をすり減らしながら、お客さまに寄り添うパートナーを目指して、沖縄中を駆け回る日々が続いた。何も苦にはならなかった。パートナーとして認めてくれたお客さまから届く関心表明書が、プロジェクトチームを支えていた。そしてその関心表明書は、ハードな日々が続く中、気がつけばファイルに収まりきれないほど増えていった。

当初相手にしてもらえなかったプロジェクトチームは、エネルギー事業者としての理解・認識を獲得し、多くのお客さまと共に歩んでいくことになった。納得いくまで話し合いを重ねて最終的な合意書が締結された時、お客さまと交わした握手は忘れられない。「なんて温かい手だろう。この温もりを届けるような、そんな事業にしなくてはならない。」プロジェクトチームは、決意を新たにした。
営業活動と並行し、建設チーム主導によるガス供給設備建設が進められた。ガスはこれまで扱ったことがないため、安全の確保に細心の注意を払う必要があった。安全を確保しつつも、本当に必要な設備は何か見極める、難しい判断を迫られることもあった。時には県外のガス設備や他の電力会社のLNG設備を見学し、どんどん知見を蓄えながら、現場の状況に合わせて設計を変更していった。誰かが正解を持っている訳ではない、正解は自分たちで導くしかない。正解はなくても目指すべきゴールは見えていた。「安定供給、それに耐えうる設備建設。」この軸だけは、ブレることはなかった。
工期という名の壁も、建設チームの前に立ちはだかった。お客さまへガスを供給開始する時期は決まっている。設計変更、メーカー・工事会社 ・行政との調整。限られた工期の中、グループ会社の協力も得ながら、建設チームは難しい課題を少しずつ解決していった。何もなかった更地に、ガス供給設備が無事築き上げられたのは、「何が何でも間に合わせる。」という建設チームの執念の賜物である。そして平成27年、様々な壁を乗り越え、ガス供給事業を開始する時を迎えたのである。

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